管理費や修繕積立金の滞納への対応は「管理会社まかせ」で良いのでしょうか?
完全におまかせにはできません。滞納対策の流れを確認し、理事会で必要となる対応を事前に検討しておきましょう。
一般的には、滞納が発生してから6か月程度までは管理会社によって滞納者への督促が行われることが多いようです。このため、振り込み忘れなど軽微な理由による滞納は解消されることが多いでしょう。しかし、こうした督促の効果がなく、一定期間を経過してしまう深刻なケースでは「債権者」である管理組合の判断が必要となります。つまり、滞納が長期化したり、悪質な滞納者が発生した場合には「管理会社まかせ」では対応が難しく、債権者として法的な措置を含めた対応を検討しなくてはなりません。
そこで、あらかじめ理事会で滞納問題への対応方法を検討のうえ、文書(ルール)化しておくことをおすすめします。以下のようなポイントについて、理事会で話し合われてみてはいかがでしょうか? ルール化にあたっては、管理会社のフロント担当者にご相談ください。
滞納問題を考えるポイント
- 早い段階での情報共有
滞納問題は時が経つほど金額が大きくなり深刻化しますので、早い段階で解決に向けて動くことが最も大切です。管理会社まかせにし過ぎず、理事会でもきちんと状況を共有するようにしましょう。 - 滞納者対策の基本スケジュール
管理会社が行う督促の内容について確認し、継続的・段階的な行動の基本スケジュールを組み立てましょう。効果的な督促方法のアイディアを話し合っておくのも有効です。これらの回収手順と内容はあらかじめ管理規約や細則に定めておきましょう。
なお、民法上、滞納の時効は「5年」となりますので、時効としないためにも、5年以内になんらかの法的手続きを行って、時効の「更新」をする必要があります。 - 理事会関与のタイミング
2のスケジュールにおいて、どのタイミングで理事会が関与すべきかを考えます。また、担当理事が直接会って事情を聞く機会を設けるかどうか、話を聞く場合にはどのような項目をヒアリングするかなども事前に決めておきます。 - 事情に応じた善後策
滞納金をすぐに回収できない場合の善後策を検討しておきます。滞納者と話し合って、支払方法等(分納や期日の延期)について取り決める場合でも、意図的に支払を拒む悪質なケースには早々に法的手段に移行するなど、個別事情に応じて対応を変えるかどうかなども決めておくとよいでしょう。 - 法的手段の確認
少額訴訟や支払請求訴訟、先取特権の実行、競売請求など、考えられる法的手段とその内容について確認をしておきましょう。実際には、費用はかかりますが弁護士等の専門家と相談して行うことをおすすめします。特に少額訴訟は60万円以下の金銭の支払いをめぐるトラブルを速やかに解決するための裁判制度ですので、滞納対策に活用しやすいものですので、検討の価値が高いです。
なお、この弁護士費用等の法的措置にかかる費用や滞納による遅延損害金などを「滞納額」に加えて請求することが認められた判例があります。違約金として、弁護士費用や督促等に要した経費、遅延損害金を加算して請求することがきる旨を、管理規約に定めておきましょう。
段階的な滞納管理費等の回収施策の例(当社の業務標準)
タイミング | 実施内容 |
---|---|
1か月目 | 未収のお知らせを郵送 |
2か月目 | 督促通知/電話/駐車場解約予告 |
3か月目 | 訪問による督促 |
4か月目 | 駐車場解約 |
5か月目 | 内容証明郵送 |
6か月目 | 法的手段の検討 |
(ハッピーアシスト通信 Vol.32掲載記事を元に最新情報を織り込み再編集)
(公開日)2024年1月29日